放送ライブラリーが保存・公開している番組の中から、あるテーマに沿って選んだ番組を紹介する「番組を視聴する会」。第3回は、6月23日の「沖縄慰霊の日」にちなみ、沖縄の民間放送とNHKが制作した、戦争と平和を題材にした番組を取り上げます。
太平洋戦争で全域が戦場となった沖縄では一般県民を含む20万人あまりが亡くなり、多くの財産、文化遺産が失われました。沖縄県では、県内での組織的な戦闘が終わった6月23日を「慰霊の日」と定め、県内の役所や学校を休みにして、正午に黙とうをささげています。
今回の「番組を視聴する会」では、戦争の記憶を伝える資料館をめぐる問題や、米軍上陸の直前に着任し県民のために奔走した県知事の真実を追うドキュメンタリー、聴取者から寄せられた平和への想いを紹介するラジオ番組など、さまざまな視点から沖縄を描いた6本の番組を取り上げます。沖縄の現状と平和を考えるきっかけになれば幸いです。
◆上映番組
1)「日曜美術館 いくさ世の画譜 丸木位里・俊 おきなわを描く」
画家・丸木夫妻の、沖縄の地上戦を描いた『沖縄戦の図』が完成するまでを追ったドキュメンタリー。『原爆の図』で知られる丸木位里さん(当時83歳)、俊さん(同72歳)夫妻は、沖縄に渡り、
縦4m、横8.5mという大作に取り組んだ。「沖縄戦を描くことこそ、戦争の本当の姿を描くことになると気づいたから」という。夫妻は那覇市に滞在し、人々の証言をもとにスケッチを重ねていく。
(1984.5.27.放送/NHK/47分/地方の時代映像祭1984特別賞(平和賞)、第32回ギャラクシー賞奨励賞)
2)「テレメンタリー2000 語る死者の水筒 ~さまよう沖縄戦の遺品~」
新しい「平和祈念資料館」への移転に伴い展示されなくなった旧資料館の展示資料の行方を、それらを集めたある老人の姿を通して追う。戦後一貫して沖縄戦の悲惨さを訴え、基地との共存に異議を唱えてきた沖縄。
しかし1999年、「刺激的な展示は好ましくない」と行政当局が監修委員に無断で新平和祈念資料館の展示内容変更を指示し、県民の大きな怒りを買った。そんな中、弟を戦争で失った老人が、戦後、執念で集めた
『当時の水の入った水筒』や『砲弾を受けた子どもの着物』、『パラシュート生地で作られたウェディングドレス』などを旧資料館から引き揚げた。「"魂のない新資料館"には展示しても意味がない。
あの戦争の実態を明らかにするのは自分しかない」。彼は孤独な戦いを再開した。
(2000.8.27.放送/琉球朝日放送/25分)
3)「For PM トヨタサウンドロード 慰霊の日企画 さとうきび畑」【ラジオ番組】
平日午後4時から生放送している「For PM」内コーナーの特別企画。番組では平和への願いを託して森山良子が歌う『さとうきび畑』を放送し、聴取者から寄せられた平和へのメッセージを紹介してきた。
この日は、本土復帰30周年という節目の年の「慰霊の日」を前に、一人の戦争経験者のリアルな証言とその思いを伝える。
(2002.6.21.放送/エフエム沖縄/25分)
4)「悲しいほど海は青く 沖縄戦最後の県知事 島田叡」
1945年1月31日、アメリカ軍の上陸が間近に迫った沖縄に県知事として赴任した島田叡(しまだ・あきら)。わずか5か月の任期にもかかわらず「沖縄の島守」と呼ばれるほどに県民に敬慕の念を残した彼の真実を
追う。当時の状況からすれば「沖縄で死んでくれ」と言われたに等しい打診に即応した彼は、反対した家族を「自分が死にたくないからといって、誰かに"代わりに行って死んでくれ"とは言えない」
と説得したという。米軍上陸が始まり、戦場と化した沖縄。降り注ぐ砲弾を避け、壕を転々としながら行政機能の維持に奔走した。彼の最期はいまだに謎とされている。
(2003.5.28.放送/沖縄テレビ放送/47分)
5)「RBCザ・ニューススペシャル 慰霊の日 戦後69年 私たちの眼差し」
戦後69年。「RBCザ・ニュース」では、戦後生まれの記者たちが自分の家族や親しい人々に沖縄戦について聞き、取材者が自らの言葉で伝えるという特集をシリーズで放送した。慰霊の日の放送では、その中から
「祖母の決断"生きたい"」、「そこは戦場だった"元学徒とたどる道"」、「亡き学友への思い」、「戦争体験を語る元看護学徒の思い」、「絵本で沖縄戦を語り継ぐ」の5本を紹介した。
(2014.6.23.放送/琉球放送/48分)
6)「ひめゆりの心 証言者たちの25年」【ラジオ番組】
1945年、沖縄で激しい地上戦が行われた。地元住民を巻き込んだこの戦争では、多くの県民が命を落とした。沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒たち222人は「ひめゆり学徒隊」と呼ばれ、
兵士の看護に当たった。大勢の学徒たちが犠牲となり、「戦争を二度と繰り返してはならない」という思いを次世代へ受け継ぐため、生き残った元学徒たちは、糸満市にひめゆり平和祈念資料館をつくり、
そこで証言員として来館者に講話活動を行ってきた。だが証言員の年齢は80代後半となり、講話活動は2015年3月で幕を閉じることになった。戦争体験者から話を聞く機会が減る中で、戦争を体験していない世代が
受け継いでいくものは何なのか。証言員たちが残した「ひめゆりの心」を伝える。戦後70年ラジオ沖縄報道特別番組。
(2015.5.30.放送/ラジオ沖縄/40分)
◆上映予定表(開始時刻) ※【R】はラジオ番組
6月5~10日
11:00 「日曜美術館 いくさ世の画譜」(47分)
12:00 「テレメンタリー2000 語る死者の水筒」(25分)
13:00 「For PM さとうきび畑」(25分)【R】
14:00 「悲しいほど海は青く」(47分)
15:00 「RBCザ・ニューススペシャル」(48分)
16:00 「ひめゆりの心 証言者たちの25年」(40分)【R】
6月12~17日
11:00 「ひめゆりの心 証言者たちの25年」(40分)【R】
12:00 「RBCザ・ニューススペシャル」(48分)
13:00 「悲しいほど海は青く」(47分)
14:00 「For PM さとうきび畑」(25分)【R】
15:00 「テレメンタリー2000 語る死者の水筒」(25分)
16:00 「日曜美術館 いくさ世の画譜」(47分)